時速500キロ?

先週、娘が教会に立ち寄ったとき、「橋本にリニア・モーターが通るんだって!」と話してくれました。事実かどうかは知りませんが、神奈川県と相模原市は誘致を進めているようです。そういえば5月にはいって新聞記事にリニアモーターカーについての報道が時折登場します。いよいよ実現に向かって事業がスタートすると言うことなのでしょうか。リニアモーターは時速500キロを越えるといいます。つまりこれが完成すると東京―大阪間が1時間で結ばれるということなのだそうです。かつての日本の戦闘機ゼロ戦は当時、世界最速の飛行機でしたが、時速400キロを記録したのです。しかしリニア・モーター新幹線は空を飛ぶゼロ戦よりさらに時速100キロ早い時速500キロを越えるといいます。ただし建設費だけで10兆円を越すそうです。しかも膨大な電力を消費するといわれています。このために原発がいくつも必要になるとも言われています。

リニアモータカーは中国の上海ではすでに営業運転が行われているそうです。たしかに中国のような広大な国では、スピードアップはそれなりの必要があるかもしれません。でもこの日本のような小さな国で、そこまでのスピード列車が必要かどうかは、なかなか意見が割れるところでしょう。
今回の原発事故は日本社会が、すべてにスピードを指向する社会と経済成長重視からの転換を図るきっかけを与えるのではないでしょうか。全部とはいえないまでも、少なくない数のサラリーマンが、子育てどころか、家庭生活すらままならないほどの多忙な会社人間として働いてます。とくに新幹線が出来てからは関西、東北方面への出張も日帰りが可能になり、以前と較べ体力的にも、限界まで働く社会になりました。この上、リニアモーター新幹線が日本中に張り巡らされるような事態になったら、ますます人々から、余裕は遠のくでしょう。そも飛行機並みのスピードのリニアモーターカーが事故を起こしたら、犠牲者も飛行機並みに、生き残ることは難しくなるでしょう。列車事故はなくなることが期待されますが、昨日も北海道でトンネル内で、列車が脱線事故を起こしたばかりです。原発も、列車も事故は起こるのです。今のところ山梨ルートが有力視されていますが、そうであればトンネルが長く長く続くルートになるでしょう。その中で巨大な地震が起これば、破壊的な事故となるでしょう。

今の日本社会に求められているのはスピードアップではなく、スピードダウンです。人間らしいスピードを取り戻すことです。空しき響くかもしれませんが、ひとには本を読んだり、祈ったり、夫婦・家族と向き合うゆとりある時間を生み出すことが望ましいことです。忙しくて教会にもいけない。多忙で夫婦が語り合う時間も持てない。気がついたら夫婦が顔を合わせても、何を話したらよいのか、共通の話題が何も残っていなかった、ということにもなりかねないのです。
たまにヨーロッパに旅行に行くたびに感じることがあります。イタリアでもオーストリアでも、サラリーマンの平均所得は日本よりだいぶ低いのです。しかし十分な休暇制度と医療保険制度の完備で、人々の生活ぶりはゆったりしています。夏のウイーンの市庁舎前の広場で、まだ十分に明るい日差しの中で、家族揃って飲み物を手に数え切れない屋台の前で一家が談笑し、乳母車を押しているのはどう見ても圧倒的に男性が多いのです。とうてい経済大国とはいえないこの国が、文化的・社会的な成熟社会であることを深く印象付けられるのです。

人は働くために生きるロボットではなく、喜び生きるために働くのです。そういう人間的な社会を目指しての未来つくりが願わしいのです。経済発展ではなく、人間を大切にする社会。リニアモーターカーより、こちらを目指してほしい。

(2011年05月29日 週報より)

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