映画「日本の青空」を見ました

数日前、ブッシュ大統領がカンザスシティーの退役軍人会で行った演説が伝えられました。戦前の日本を現代の国際テロ組織・アルカイダになぞらえて、「当時の日本人の多くが民主主義は日本では育たないと考えていた。」と述べたとのことです。だからこそ、アメリカが占領軍として、民主主義を日本に与え、植えつけたのだと言う理屈がそこにはあるのでしょう。朝日新聞は、ブッシュ演説は日本における明治時代の自由民権運動、大正デモクラシーの歴史をまったく無視しているではないかと社説で反論しています。ブッシュさんの論法からすると、現憲法がアメリカの押し付けであったとする安倍首相の主張は皮肉にも根拠が与えられたことになるかもしれません。だからこそ、イラクも軍事的に制圧して、平和にすることができるというのがブッシュさんの演説だったようです。ですが当時の日本人の大半は戦争に飽き飽きして、平和を求めていたのです。

ごく最近ですが、知識のないわたしですが、ある映画を通して鈴木 安蔵さんと言う偉大な憲法学者についての映画を見せていただきました。鈴木 安蔵さんは1904年生まれ、福島県出身の方で京都大学在学中に、かつての悪法<治安維持法>逮捕者第一号として苦難の歩みを強いられた憲法学者です。特高警察の取調べの中で様々な拷問を味わい、獄中で欧米各国の憲法について詳細な比較研究をした方だそうだ。日本が敗戦に至るまで、公的な仕事に着くことは許されず、特高警察による監視下の中で、報いられない極貧生活を強いられる日々を耐えねばならなかった。

しかし1945年8月15日に日本がポツダム上宣言を受託して無条件降伏をして、11月15日に、高野 岩三郎(大原社会問題研究所所長、のちのNHK会長)を中心として、森戸 辰夫(社会学者、芦田内閣の文部大臣、東大助教授)、室伏 孝信(朝日新聞記者)、岩淵 辰雄(読売新聞記者、後に貴族院勅撰議員)らが、鈴木 安蔵を中心として民間の<憲法研究会>を組織してGHQに所属したハーバート・ノーマンの協力も得て、1945年12月26日に憲法草案要綱を提出したのです。ハーバート・ノーマンはGHQにおいては対敵諜報部課長という立場でしたが、この人の父親は<長野のノルマン>として深く尊敬された宣教師で、ハーバートも軽井沢生まれのカナダ人でした。後にアメリカに吹きまくるマッカーシー旋風の中で苦しい立場に追い込まれたことでも記憶されます。

やがて日本政府による政府案がGHQによって非民主的であるとして拒絶され、鈴木 安蔵が中心として起草された<憲法研究会>による草案を手本にして、GHQが日本政府に現憲法案が提示したのです。鈴木 安蔵案には<国民主権><言論の自由><男女平等><拷問の禁止>などが明記されています。押し付けられたものだからこそ、自主的な憲法が必要だと一方的に喧伝される現憲法は、すでに時代に合わないのだと言われます。しかし、この憲法は治安維持法で人生の活動的なときを獄中に強いられたひとりの憲法学者が取りまとめたものが土台になった・・・のでした。

憲法は決してアメリカによって押し付けられたものではありませんでした。かつての軍国主義ファシズムによって苦しめられた多くの人々の思いが<憲法研究会>草案として取りまとめられた結果のものでした。民主主義を押し付けたとブッシュさんは胸を張ります。しかしそのアメリカこそがイラク人への拷問、収監者への暴行で世界中で非難されています。
(この映画の試写会9月20日八王子のいちょうホールで午前・午後・夜 に行われます。希望者の方お申し出ください。)

(2007年08月26日 週報より)

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