筋を通す

現代は情報革命とか、情報戦争といわれるほどに、いかに情報を得るか、あるいは情報を独占するかが、企業や国家にとって大切な時代のようです。とはいえ、そう言うことには全く無知で、関心のない私などには、インターネットやメールで最小のことができればそれで充分なことです。ところがテレビでも、ラジオでも、インターネットの画面でも、毎日必ず登場するのがその日の運勢、つまり<占い>です。TVではちょうど7時前のニュースの切れ目に、これが入ります。つまりは出勤するサラリーマンも一応その日の運勢が気になるということでしょうか。聞いていると、たとえば、「今日一日、些細な言葉で周囲の人を傷つけないように気をつけましょう。そうすれば、あなたの今日は快適に過ごせます。」というような具合です。いちおう「ふむ、ふむ、なるほど。」と思わないこともないのですが、こんな文章なら、私でも簡単に、作ることができる、という言葉ばかりです。情報化時代の人々は、そういわれて自分を奮い立たせないと、気弱になって一日が始められない。それほどにつかれた心が、現代人を支配しているともいえます。

かつて第二次大戦中のフランスのレジスタンスを率いたド・ゴール将軍は占いにこっていたことが死後明らかにされました。フランスは戦後長い時代政情不安でした。その主たる理由は、植民地としてのベトナムを失って、唯一残ったアルジェリアの独立を認めるかどうかで国論が二分したことでした。フランス現地軍はアルジェリアにおける独立運動を押さえるために、民主主義を振り捨てて、強権を発動していました。拷問、指導者の殺戮。独立阻止のためにはありとあらゆる方法を行なった一時期があります。そのためにフランス内閣は次々と登場し、倒れました。やがてしびれをきらしたアルジェリア駐留の現地部隊が、反乱とクーデターを起こし、やがて軍部全体がクーデターに傾いたのでした。
将軍たちはフランスの右翼を代表すると見られた、かつての英雄シャルル・ド・ゴールを指導者としてかつぎだしたのです。フランスは一挙に右旋回すると見られた矢先、ド・ゴールはアルジェリアの独立を認めてしまったのです。戦後最大の危機を迎えていたフランスは、この決断によって、クーデターから救われ、いっきょに安定を取り戻して行ったのです。当然、ド・ゴールは何度も暗殺の危機に見舞われました。だからでしょうか、ド・ゴールは占いが好きだったようです。動脈瘤破裂でなくなった時も、彼はトランプ占いをしていたと当時の新聞は伝えました。占いがド・ゴールの政治的判断を変えたはずはないでしょう。でも、不安に心引きずられたのです。現代人はド・ゴールを笑えません。今、これほど占いが人々の心を捕らえているのですから。

旧約聖書でも占いが非難されています。古代でも、現代でも、いつの時代にも、占いは絶えません。じつは、運勢の良い、悪いなど、ないのです。占いは、当るも八卦、当らないも八卦というくらい、要するに遊びに過ぎません。でも遊びの向こうには、ゆれ動くある恐れがあります。信じる神を持って、心に信仰の筋道をたてるのか、それとも不安な心理の中で、自分を圧倒するかも知れない、謎の力を恐れて日々の運勢をはかるのかどちらかでしょう。キリスト教信仰を生きることは、選び取る心を持つことです。神の道に反することに明確に「NO」を言い切ることは、共同体としても教会も、個人も大切なことです。
強要されたとはいえ、太平洋戦争中に教会のリーダーが神社礼拝を受け入れたことは、消しがたい汚点として残りました。海の向こうの韓国や中国では、これを拒絶して神学校は閉鎖され、キリスト教徒は殉教していました。妥協や、優柔不断が、キリスト教信仰にそぐわないことは、しばしばです。今日は<主の日>の日曜日。この日は<礼拝の日>と定めたキリスト教徒の決断も、信仰の筋でした。この筋をいかに通すか、崩すか、あなたが決めます。

(2005年06月19日 週報より)

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