天からの恵み

「多摩モノレール松が谷駅のそばに由木東市民センターがあり、年に数回そこを利用します。9月はバザーのチラシの印刷のため、12月はクリスマスのチラシ印刷のためです。そのセンターの目の前にとても大きなイチョウの木があります。市の天然記念物となっているようで、太さ7メートル、高さ30メートル、樹齢500年の老木です。

バザー印刷の時は(9月の1週目の日曜日)いつも町会のお祭りの日と重なります。センター前は丁度休憩所になっていて太鼓の音が響き渡り、その大きなイチョウの木は暑い中、重いおみこしを引いてきた人々に涼しげな木陰を作っています。

先日、クリスマスのチラシを印刷するためセンター前のイチョウの木のそばを通ると 何人かの人たちが何かを一生懸命拾っています。最初は綺麗な葉っぱでも拾っているのだと思いましたら、どうやらイチョウの実(銀杏)を集めているようです。急いで手続きを済ませ、夫に印刷をお願いして、ビニール袋を持って行ってみました。
10人くらいの人たちが袋一杯に銀杏を集めています。銀杏拾いは初めてで、実がチェリーのように柔らかい果肉に包まれて落ちてくるとは知りませんでした。イチョウの木の下は地面が全く見えず、黄色い落ち葉のじゅうたんで敷き詰められ、目を凝らさないと見つかりません。しばらくしてもう取り尽くしたと思われた時、風が吹いて、木を揺らしました。その時突然ボトボトボトと大きな音を立てて新たな実が落ちてくるのです。そんなことを何度も繰り返してたちまち袋一杯の実を拾ったのです。上を見上げれば青空に映えた黄色の大木、下はふかふかの黄色いじゅうたん、雨のように降り注ぐ木の葉と木の実。まるで絵本の1ページの中にいるような夢のようなひと時を過しました。

旧約聖書民数記11章にモーセに率いられてエジプトを脱出し、奴隷から解放されたイスラエルの民は荒野をさ迷う中、その恵みを忘れ、はげしい不満をモーセにぶつけます。「エジプトにいる方がましだった」「肉が食べたい」「葱(ねぎ)や玉葱(たまねぎ)やにんにくの味が忘れられない」等々。そのとき主はモーセに「主の手が短いというのか、わたしの言葉どおりになるかならないか、今あなたに見せよう」と言われます。そしてマナ(コエンドロ(コリアンダー) の種のようで臼や鉢ですりつぶして煮て食べるとクリームのような味の菓子になった)を毎朝、天から降らせるばかりでなく、海の方から風に吹き寄せられてうずらを天から落とされたと書かれていることを思い起こしました。

思いがけない天からの恵みに感謝し、早速おいしく頂きました。ふと、何年も前に F.N さんとこの銀杏の木のそばを通った時の会話を思い出しました。

私     「このイチョウの木イチョウ(一応)天然記念物なのよ」
F.N さん 「座布団一枚」

小枝 黎子 (2010年12月12日 週報より)

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