想定外の出来事

海外を旅行すると普段日本にいるときの常識では考えられない状況に出くわすことが多くあります。自分の固定概念や価値観に固執することなく柔軟な対応の大切さを知らされます。

今年ドイツから列車移動で最初に着いたイタリアの街はストレーザというスイス国境に近い町でした。そのまま乗っていればミラノに着く列車でしたが是非是非我が家に泊まって下さいとのお誘いを受けて途中下車したのです。その駅からローカル線で20分位のアローナという駅までの切符を買う窓口で「パソコンの調子が悪いから自動販売機で買って下さい」と言われてしまいました。操作が分からないので困って、近くにいた女の子たち(スイス人)に手伝ってもらって無事買うことが出来ました。列車を待っていると向かいのプラットホームでさっきの女の子たちが何か叫んでいます。どうやら到着する列車のプラットホームが直前に変更になったようです。気が付くと周りの人たちが荷物をゴロゴロさせて移動しています。このような事イタリアではよくあることのようです。

アローナの駅には娘のイタリア滞在で大変お世話になったG氏が待っていて下さいました。ミラノから昨年こちらのマッジョーレ湖畔に引っ越したそうです。ミラノのお宅にはお邪魔したことがあり、広い屋敷にお一人で住んでおられましたのでお土産は日本の美味しい食べ物を持参しました。ところが着いたお宅はリモコンでドアが開く大邸宅だったのです。しかもその館の持ち主は女性でした。急きょ娘に渡すお土産から女性が喜びそうな物を探し出しプレゼントしました。彼女はエレガントで知的で心優しい貴婦人で、広い館で家事をする人が何人もおられるのに、滞在中三食全て彼女が手作りでもてなして下さいました。

次の日駅まで送って下さりミラノの駅に到着しました。そこから娘が住んでいる最寄り駅ピアチェンツアまでローカル列車に乗り換えなければなりません。ミラノの駅はいつもスリが多く注意が必要です。でも今年の手口は想定外でした。到着した列車に乗り込んだとたん若い女の子たちが私の荷物を手伝うかのごとくどんどん押していくのです。取られまいとして荷物に手を伸ばした時、ふと気付くともう一人の女性が私のショルダーバックに手を入れようとしていたのです。それでパシッと彼女の手を叩きました。夫にも荷物を棚に上げるよう勧めたそうです。両手が上がったところでポケットから何か盗もうとしたのでしょう。女性集団スリで列車が動いた時には皆下車したらしく一人もいなくなっていました。

娘が住んでいるところは最寄り駅から車で40分位の所にある360度トウモロコシ畑に囲まれた田舎で、オーナー・シェフのサブリナさん(40才代の女性)の大きな石造りの家に一緒に住んでいます。一世帯分の部屋が空いていてそこに私たちが滞在できるよう準備して下さっていました。とても歓迎して下さって顔など撫でまわすし、水分たっぷりのキスを何度もして下さるのには参りました。娘のレストランでは私たちの結婚40年のお祝いの食事を準備して下さり最後に大きなお皿に Buon Anniversario 40 anni insieme (結婚40年おめでとう一緒に)と書かれたケーキが出てきて感激しました。

ある夜、彼が車を使って仕事に行ったので車が無く、娘と歩いて近くのレストランに行くことになりました。30分くらいトウモロコシ畑を歩きやっと着いたレストランがあいにくお休み! がっかりしてまたもと来た道を歩いていたらオーナー・シェフのサブリナさんの車と畑の道で出会い、それならと車で他のレストランまで送って下さいました。嬉しかったですが内心この距離どうして帰るのか心配でたまりませんでした。

そのレストランで地元のパスタを頂きましたが最後に頼んでいないリゾットがサービスで出てきました。その後寄ったスイカ屋さん(夏のみ出現する屋台)でも頼まなかったスイカのジュースを頂き、びっくり!

さて、これからどのくらい暗い道を歩くのかと心配でしたが近道があるとのこと。街頭もない真っ暗な道を三人で歩き始めました。周りからの様々な音色のカエルの大合唱の中、ふと空を見上げると何と今まで見たことのないような大きな満天の星にびっくり! しばらく空の星を楽しんでいたら突然まばゆい光の帯がはるか先に落ちて行くのが見えてびっくり! 多分流星群だったと思います。夢のようでした。幸い途中彼からの電話で車のお迎えとなり無事帰宅したのでした。

人生は想定外の事ばかり。良いこともあれば辛いこともあるでしょうが過剰反応せず神様にすべて委ねて歩みたいです。

わたしの思いは、あなたたちの思いと事なり私の道はあなたたちの道と異なると主は言われる。天が地を高く超えているようにわたしの道は、あなたたちの道を。わたしの思いは あなたたちの思いを、高く超えている。

イザヤ55章 8・9

小枝 黎子 (2014年10月12日 週報より)

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