聖地のアドヴェント

アドヴェント(待降節)を迎えました。

地を踏み鳴らした兵士の靴 血にまみれた軍服はことごとく 火に投げ込まれ、 焼き尽くされた。
ひとりのみどりごがわたしたちのために生まれた。
ひとりの男の子がわたしたちに与えられた。権威が彼の肩にある。
その名は、「驚くべき指導者、力ある神、永遠の父、平和の君」と唱えられる。

イザヤ書 9:4,5

思えば大変な世界情勢となったものです。アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、ドイツその他の国々が航空母艦や戦闘機を繰り出してシリヤを毎日のように爆撃し、国連発表(9月時点)では、シリヤではなんと4百万人の人々がトルコ、レバノン、ヨルダン、エジプトに逃げ出し難民化し、32万5千人がヨーロッパに到着し、受け入れを待っているというのです。現在の数字はこれよりもはるかに多いことでしょう。そして日々、テロと爆撃で途方もない死者が生まれています。これはもう世界戦争と言ってよい状況です。そして日本の自衛隊も南スーダンに派遣される準備が着々と整えられています。

しかもせっかくたどり着いたヨーロッパの難民受け入れセンターも、あまりの到着者の多さに収容が間に合わずトイレも風呂もないテント暮らしがあてがわれていると伝えられています。住む家があり、茶碗一杯のご飯と、一片の魚と、豆腐の入った暖かいみそ汁が、とても御馳走に感じられる夕食。出産を前にナザレから、ベツレヘムに急がなければならなかったマリアとヨセフ。そして生まれてからは幼子の命を狙うよこしまなヘロデ大王を避けるためにエジプトに逃げなければならなかったマリアとヨセフと幼子イエス。まさに聖家族一家は難民の人々の苦しみを先取りされたのです。

シリヤと言えば使徒パウロが突如として回心を経験した場所です。そこは,今も首都があるダマスカスでした。聖書の舞台ともなった場所です。爆撃でテロが根絶できるわけがないことはだれでもわかっています。幸せな家庭からはテロリストは育ちません。痛めつけられ、不当な扱いを強いられ、差別を負わせられた人が、テロにしかはけ口を見出せなくなってアルカイダやISに何らかの将来を見出すのです。中東の問題は長らくこの地域を植民地としてきたイギリスとフランス、そして石油利権を保持してきたアメリカにあることは明らかです。もちろんこの地域の石油に依存する日本も関係なしとは到底言えません。

日本人もかつては難民状態でした。1945年、わが家はすべてを失って幼い私を引き連れて樺太から引き揚げたのです。戦後アメリカによる様々な援助が日本を飢餓から救いました。わたしは戦後の飢餓を少しは記憶しています。その時食べさせられたサツマイモは唯一わたしが好きになれない食品です。シリヤの人々を見捨ててはならないでしょう。

(2015年11月29日 週報より)

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