1月16日の轢死事故

2週間ほど前、JR山手線の目白駅ホームから、視覚障碍者のマッサージ師、武井視良さん(42歳)がホームから転落して電車にひかれて亡くなったと報じられました。なんとも気の毒な出来事で二度とこうした事故が起こってはならないはずです。ところがじつは転落を経験したことがある視覚障碍者はかなり多いらしいのです。一連の新聞記事によると<視覚障碍者の二人に一人はホームからの転落を経験している。><全盲の方の場合は3人に2人が落ちている。>そしてさらに<仕事で毎日駅を利用する方では、9割もの人が転落を経験している>と伝えられました。ホームの縁には展示ブロックが埋め込まれていますが、これは残念ながら安全を確保するところまでは至っていないようです。

自宅の階段を真夜中に、暗闇の中で下りていく途中で、一段踏み外すだけでもなんともいいようのない恐怖感を感じるものです。ましてや駅のホームから転落するなど、想像を超える怖さがあるでしょう。視覚障碍の方々に安全に電車の乗降が可能とすることは、電鉄会社の義務でなければならないと誰しも思うでしょう。一部のモノレールや地下鉄などで見る可動式ホーム柵を完備するとか、ホーム要員が配置されるとか、何らかの安全策が講じられることは、サービスを提供する会社の義務だと思うのですが、今のところはそうはなっておらず、多くの視覚障碍者が、現にそうしてホームから転落し、不幸にして轢死する人々がたえないようです。

記事によれば山手線に可動式ホーム柵は2017年には完備される予定とのことですが、全国的にありとあらゆる駅にこれは完備されるのは途方もない将来かもしれません。高齢化や糖尿病から来る網膜はく離によって視覚障碍を得る人は増加していると聞きます。安心してこの方々が電車の乗降が出来ずにいるとは、もうひとつの人権問題ともいえます。けれどこうした現実があることは今すぐ、何らかの手を打たねばならないはずです。しかし早急に打つ手がないとすれば、なんらか人の輪で、事故防止に手が伸べられないだろうかと思うばかりです。
わたしは家にいることが多く、通勤に毎日電車を使うひとではありませんが、おりおりに電車に乗るときに、もし視覚障碍の方を見たら、まず声をかけて一緒に乗り降りすることを心がけようとおもいたちました。こうしたことを出来るだけ多くの方々が参加するならば、事故は少しは減るに違いありません。また、こうした事故にひとりでも多くの人が関心を示すなら、電鉄側も、時には行政も、動くかもしれません。

私の知り合いの視覚障碍者にも聞きました。彼女もホームから落ちて、寸前のところで重大事故のなるところを、後ろにいた屈強なアメリカ人が瞬時に抱き上げて助けてくださったそうです。人の命は全世界よりも重いことをなお知るべきです。

(2011年01月30日 週報より)

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