亀裂

この文章を書いているのは8月28日の深夜です。いよいよ夏が終わります。8月は広島・長崎の原爆や終戦に関する思いとともに、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落し520名の方々が死亡した出来事が思い起こされます。1985年8月12日。ちょうどわたしはほぼ同じ時刻に別の飛行機に乗っていました。日航ジャンボ123便は6時12分に羽田を離陸し、14分後三浦半島に近い太平洋上で、機体後部の圧力隔壁が吹き飛び、油圧系統が無力化し、尾翼の大半がなくなってコントロールがきかない状態になってしまった。以前しりもち事故を起こしたときのボーイング社の修理が不十分だったことも一因で、隔壁は目に見えない金属疲労が昂進していた。
飛行機は焼津を経て、コントロール不能の状態で富士山から、奥多摩を上空を飛び、相模湖、大月そして6時56分に御巣鷹山に激突したのでした。行き届きいたサービス、最も安全な乗り物とされるジャンボジェット、機器そのものへの安全性は徹底的に図られていますが、運航やメンテナンスでのヒューマンエラーをゼロにすることは不可能に近いことのように思えるのですが・・・。

でも機械とはくらべものにならないほど微妙で、壊れやすいのが、人間の心です。機械なら修理、修繕が可能ですし、部品の交換で問題解決します。けれど人間の心は取り替えるわけには行きません。ジャンボジェット機の様に、はた目にはきらきらして堂々と立派に見える紳士淑女が、その内面では崩壊寸前という出来事をわたしたちはあちこちで目撃します。権力の頂点にいた世界的政治リーダーである人が、じつはとてももろいこころの持ち主であったということが知られています。
たとえばチャーチルは首相職にあったときアンフェタミンを常用していたといわれます。アンフェタミンは代表的な覚醒剤のひとつです。
フランスの英雄シャルル・ド・ゴールは占い師を身近においていました。
J・F・ケネディは絶えざる女性関係がありました。
リチャードニクソンはウオーター事件後、酒びたりの日々だったと言われます。
厳しい緊張の中で、どうにもならない内面の崩壊をこの人々は抱えて激職に耐えたのでした。
現代の日本において、自殺、心病むこと、夫婦の関係亀裂、いじめ、非行、犯罪ドラッグの蔓延。隔壁の金属疲労ならぬ心の疲労が日常生活の破綻、人格の崩壊につながっています。

現代人は疲れきっています。精神は肉体以上に疲れているかもしれません。大人ばかりでなく、子ども達も「疲れた、もっと寝たい!」という子が多いのだそうです。リーダー達も、大人も、子どもも、老人達も、からだもこころも疲れ、時には理由も無く怒りっぽくなり、やがて精神がいつ全面崩壊するか分からないほどに目に見えない亀裂がびっしりと心を覆いつくしているということは、御免こうむりたいものです。

旧約聖書の箴言に次のような言葉があります。

「何を守るよりも、自分の心を守れ。そこに命の源がある。」

箴言3:23

秋を迎えました。新たな思いで信仰の歩みを踏み出しましょう。

(2009年09月06日 週報より)

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