松坂大輔のリリーフ失敗
ゴールデンウイークの新聞記事で、私にとって興味をひく出来事が伝えられました。日本人のメジャーリーガー、ボストン・レッドソックスの松坂大輔投手が最近負けが混んで、本来、先発投手として使われている彼が、5月4日渡米後はじめてアナハイム・エンゼルス戦で、緊急リリーフに登板したのです。しかもその日、2時間35分も降雨によって試合中断があったので、松坂大輔投手がピッチャーズマウンドに登場したのは、なんと深夜の2時27分でした。ついでに言えばアメリカの野球には時間オーバーによる引き分けはなく、決着するまで試合は続行するようです。
メジャー5年目で松坂投手に救援機会がめぐってきたのは延長13回、3対3。レッドソックスは試合の結果を松坂投手にあずけたのです。結果は、 松坂が相手に満塁をゆるし、決定的な2点タイムリーヒットを浴びて、その裏、味方打線は3者凡退を喫して午前2時45分に3対5で松坂は敗戦投手となり、新聞は松坂の当分の当番予定は消えたと伝えたのです。
怪物君といわれた松坂投手のことだから、きっと活躍するだろうとファンは期待していることだろう。しかし野球は面白い。この日の松坂のように、ワンポイントリリーフもあれば、代打や代走だってある。完投は出来なくても、1回を投げきれば、場合によってはたった一人の打者をうち取ればよいと言うリリーフもある。打つ・守るはからっきしダメでも、走るのは抜群に早いという代走専門の選手もいます。みんながみんなイチローのように攻・走・守できなければならないというわけでもない。でも、やっとめぐってきたリリーフに失敗した松坂選手が次なる先発・救援の機会を与えられ、名誉挽回をはかるのはいつになることになるだろうか。
じつは昨日、つながりから言えば甥にあたる青年の結婚式がありました。彼も、お嫁さんとなったお嬢さんも真面目そうなクリスチャンです。やがて彼らがパパ・ママとなる日も遠くないかもしれない。人はそれぞれ社会人であり、家庭人であり、また信仰者というそれぞれの役割を果たしています。人生にはワンポイントリリーフや代走・代打はありません。メジャーリーガーでも、賭博や筋肉増強剤そしてドラッグに手を出して、社会人としては失格していった人々は枚挙にいとまもありません。
信仰者の社会生活も、一般の人々の生活と見たところは少しも変わらないでしょう。でも心は違います。心の奥底に脈打つ信仰を核に、家族の関係や、社会・隣人関係が築かれていきます。でも言うはやすしです。よき会社人間であることと、よき家庭人、そしてよき教会員であることを両立させることは簡単ではありません。よき教会員ならば、あとの二つはどうでも良いというわけにもいきません。そも人間は偏りがあるものです。人生にはワンポイントリリーフも代打も代走もありません。
何の変哲もないような主日の礼拝から始まるわたしたちの生活。日常の家庭生活、忙しい日々の仕事の連続。わたしたちは毎日が必死のオールラウンドプレイヤーなのかもしれません。他人のことは見えるのに、自分のことはとても見えにくい現実の中で、寛容な心でわたしたちを見守ってくださる神の視線の中で、時には13回逆転負けもあるかもしれない。でも、きっとネクスト・チャンスもある。「シリーズは長い」とレッドソックスの監督は言ったとのことです。
(2011年05月15日 週報より)