主よ、言ってしまいました 公開済み 2023年2月5日 · 更新済み 2023年2月5日 主よ、言ってしまいました 私はカッとなっています身振り手振りでことばをつくし、まくしたてたのでわたしはとうとう頭にきてしまいましたわたしは全身をうちこんで語ったのにたいせつなことは何一つ通じていないのですたいせつなことは、わたしのものではなくわたしのことばは、それを運ぶにはあまりにもあさはかなのです。主よ、言ってしまいました。わたしは心配です。しゃべることは深刻なことだから、こわいのです。他人のじゃまをし、外に引っぱり出し玄関先に立たせるのはたいへんなことです他人を待たせ、手をのべさせ、心をはずませて光を求めさせ、生きる勇気をおこさせることは大変なことですしかも主よ、もしその人たちを、むなし手で帰らせたならわたしはどうしたらよいのでしょうしかし、主よ、それでもわたしは語らねばなりませんこのしばらくの時、あなたがわたしに語ることばをくださったので わたしはそれを使わなくてはなりませんわたしの魂を、他者にむかってあけわたすためにことばは唇にむらがってきますことばがないなら魂をどうしてあけわたすことができましょう肉にとざされた幼子の小さな体の中はわからなくてもひとこと、ふたこと語ることばで、小さな魂があらわれると 家中みんながよろこぶのですだれかが死ぬとき、その絶望的な枕辺でかたる臨終の言葉に 家中みんなが耳をすますのですやがて息をひきとってしまうと、沈黙のとびらが閉ざされ 目が閉じ、唇がつぐむなら、肉親は死人の魂をもはや知ることはできません主よ、ことばは賜物ですだからわたしも、誇りや臆病や怠慢や無情のゆえにだまっていることは許されません他者もまた、わたしのことばにこたえ、魂に聴く権利をもっていますわたしがあなたの使信を預かっている以上わたし以外にだれがそれを伝えることができましょう私には言わねばならないことがあるのですたとえそれが短くても、わたしのいのちから溢れでてわたしがそれに背を向けることができない何物かがあるのですしかし、わたしのことばは真実なことばでなければなりません他者の目をひくために、ことばの隠れみので魂のほんとうの姿を隠してしまうなら信頼が破れてしまいますわたしが注ぎだすことばは生きたことばでなければなりませんわたしの魂が自らとらえた神秘この世界と人間とに示される神秘にみちていなければなんの役に立つことができましょうわたしが語ることばは神をはこぶことばでなければなりません主よ、あなたがわたしにお与えになったこの唇はわたしの魂をあらわすためにつくられ、わたしの魂はあなたを知り、あなたに結びつくためにつくられたのですしゅよ、お赦しください、あんなことを言ってしまってお赦しください、わけもないのに言ってしまってお赦しください、わたしの唇をあさはかなことばでけがしたことを、いつわりのことば、臆病なことばの中をあなたはお通りになることはできません。主よ、わたしが語るときには、わたしの心を高くあげわたしが会議で論じ、兄弟と語りあうときにはわたしを支えてくださいそれにもまして主よ、わたしのことばがまかれた種のようにそれをきく者が、豊かな実りをのぞめるようにしてください。ミシェル・クオスト「神に聴くすべを知っているなら」 2023年2月5日 週報の裏面より