どちらが人間的で、どちらが動物的か

新聞に掲載された出来事です。アメリカウイスコンシン州東部の町で、足の不自由な女性の家で火事が起こったのです。アメリカ人はろうそくが好きです。たまたま飼い猫がろうそくを倒して、火が燃え広がってしまったのです。交通事故で片足を失った女性はソファでテレビを見ていて義足が手元になく、動くに動けない状態だったのです。そこにいたのは13歳の雌の介助犬ジェシーでした。介助犬ジェシーは義足と電話を運んできたのです。女性はジェシーに伴われて外に逃げ緊急電話をかけることができました。その時ジェシーは2階でろうそくを倒したのとは別の飼い猫の泣き叫ぶ声を聴いて、ジェシイーは再び燃えさかる火のなか家に入りジェシーも猫も出てこなかったそうです。

次の話も一昨年起こった実話です。アフガニスタンに兵士のひとりとして派遣されていたペン・ファージングと犬の物語です。しばしば戦場に送られた兵士はストレスや緊張から心を病むものです。その日、ペン・ファージングはナウ・ザドの町の警護に遣わされたのです。たまたま彼は人々が金を賭けた闘犬の現場に出くわしたのです。彼はいかにもイギリス人らしいのです。これを直ちにやめさせ、人々を解散するように命じます。ふと気が付くと闘犬として戦っていた犬の一匹が彼についてきたのです。さっそくペン・ファージングはこの犬をナウ・ザドと命名し世話をすることにしたのです。

アフガニスタンに派遣された兵士にとってパトロールはいつ襲撃されるかわからない危険な任務です。そこでどうやら英軍の兵士にとって犬を飼うことが、戦場ストレスからの癒しにつながっているようです。しかしやがてペン・ファージング氏も帰国の日を迎えます。彼にとってナウ・ザドは簡単に手放せる存在ではありませんせんでした。アフガニスタンからイギリスにナウ・ザドを連れ帰ることは簡単なことではありませんでした。けれど様々な困難を越えてペン・ファージングはナウ・ザドを英国に連れ帰れたのです。帰還兵士が戦場ストレスを抱えながら日常生活を取り戻すことはどの国も問題を抱えています。自殺率もとても高いのです。

ペン・ファージングはアフガニスタンで親しくなった犬がどれほど兵士としてのすさんだ心を取り戻すのに役立つかを自らの経験から学んでいました。そこで帰国後<ナウ・ザド・グループ>なる団体を組織しアフガニスタンで犬と親しくなった英国兵が、犬を持ち帰られるように支援団体を作ったのです。2014年で650人の帰還兵士がそうしてイギリスで犬との再会を果たしています。ペン・ファージング氏はさらにアフガニスタンで病気の犬や猫を組織的に助け、飼い主を見つける運動を始め、また現地の大学生に病気の動物の世話の方法を教え始めています。ペン・ファージング氏の働きは人々の注目を集め2014年の11月にCNN放送が<ヒーロー・オヴ・ザ・イアー賞>を授与したのだそうです。

助けたはずの犬から、人生を救われたペン・ファージングさんの社会貢献。人と人は戦場で殺しあい、むろん憎悪で対峙する。けれど人と動物はこうして美しい助け合いで心つながれる。一匹の犬が多くの傷ついた人の心を癒す。どちらが動物的なのかと…問います。

(2016年02月21日 週報より)

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